p,44〜p,51
『左派と右派の区別』つづき
現在は、左派と右派の主張が完全に異なる問題ばかりではない。社会民主主義者は単なる妥協ではない政治的中道、(穏健左派とは異なる)「活動的な中道」あるいは「急進的な中道」という概念を入念に検討すべきであるといえる。
なぜ、中道左派か。
(1)現在の諸問題は急進的な政策を必要としている。
・たとえば環境問題では、環境の不可逆性により、一刻の猶予もないため、急進的なものが望まれる。
(2)経済学者J・K・ガルブレイズはいう、
“現代において裕福な人々は恵まれない人々の運命への関心を失っている。”
しかし、ヨーロッパ諸国における研究では、その逆が真実である。貧しい者から富める者への呼びかけによる同盟(ボトムアップアライアンス)は可能であり、「急進的」な政策(たとえば、環境問題に対する政策)のためには必要である。
(3)社会民主主義者は、「人々の積極的な人生選択を具現化できる社会」をつくるために、中道左派として脱皮しなければならない。
*この『人々の積極的な人生選択を具現化できる社会をつくる!』が、『The Third Way』の基調である。
(4)かつてのように「左派」と「急進的」はイコールの関係で結ばれてはいない。「左派」と「急進的」であることの結びつきが弱まったことは、以前はあまりに高かった、政治思想の壁を越えた意見交換を可能にするという大きな収穫をもたらした。
・たとえば、新しい福祉国家を考える場合、社会民主主義者と新自由主義者とでは大きな見解の相違がある。しかし、その福祉国家のがどうあるべきか、という意見の相違はありながらも、全ての福祉改良者達が直面している問題が存在し、それに対しても、より「急進的」な再考が求められている。
『ポリティカル・エイジェンシー』
エイジェンシーとは?
principal—agency(本人—代理人)関係のなかの「代理人」
具体的には「有権者—政治家」(他の例として「株主—取締役」など)
代理されたことにより、義務を負う者。
*日本語にするにはなかなか難しく、読書会では「エイジェンシー」で通しました。
政治家、政府の役割の再検討
(1)社会民主主義政党は市民運動から生まれ、また新しい市民運動に先を越されつつある。またこの流れの中で、政治の地位低下も言われている。
(2)新自由主義者は政府の役割について批判し続けてきたが、社会民主主義者はその見方に反論すべきである。最近、政治の終焉、国家の衰退もいわれているが、だからこそ、今、政府の役割を再検討することは価値があることであるといえる。
政府は何のために存在するのか
・多様な利益を代表するパイプ役
・その利益要求を調整する場の提供
・政策についてなんの束縛もなく、自由に討議できる場の提供
・集団安全保障や、福祉などの公共財の提供
・独占を防ぎ、公共の利益のために市場を規制し、市場競争を促進
・暴力を抑止し、治安を維持し、社会の平安を保つ
・教育の中核となり、人的資本を開発
・実効的な法の維持、整備
・ミクロ、マクロ、両面に対する直接的な経済運営
・議論はあるが・・・教育システムの中で「良き市民」となるための価値規範を 教え、広める(民度を上げる)
・国内外との連携でグローバルな目標を目指す
(1)政府と民間の活動領域が重なる部分もあり得るが、だからといって国家や政府が不要になったということは言えない。市場は政府の役割を担うことはできない。
(2)NGOなどの市民運動も社会的な存在感は増しているものの、政府を代行する事はできない。しかし、グローバリゼーションの中で、社会民主主義者が変化に対応できずにいたとき、NGOは変化に敏感に、その問題点を前面に押し出した。
(3)脱政治化が進展しているという見方もあれば、政治参加が広がったと考える見方もある。
(4)ウルリヒ・ベックは、政治が議会から、単一争点を中心に形成される市民グループへ移る「下位政治」の出現について言及し、その市民グループである、グリーンピースやオックスファムは世界規模で活動している。
(例)シェル石油のブレントスパー油田掘削装置海洋投棄問題
環境保護団体は不買運動に乗りだし、シェルの態度は大きく変化した。
シェルの変化は、NGOなどの新しい市民グループがグローバルに活動するようになり、多国籍企業は彼らの活動を無視できなくなったことを示している。
(5)提案する市民グループは、政治家に先駆けて環境問題などの新しい問題に取り組むきっかけをつくってきた。
文芸評論家ハンス・マグナス・エンツェンスベルガーはいう、
“ドイツにおいて、また他の国々においても、政治家への関心が薄れているにもかかわらず、政治はうまくいっている。つまるところ、(政治家は)何の役にも立っていないのである。”
〈私が理解できたこと〉
『左派と右派』のまとめとしては、「中道左派」を見直す必要があるのはなぜなのか、また、「急進的(ラディカル)」が必要とされる現在の社会背景が論じられていました。読書会に参加させていただいて、現在の環境問題と急進的(ラディカル)な活動が「不可逆性」をキーワードに結びつくことが理解できました。
『ポリティカル・エイジェンシー』では、最近よく耳にする「政治」や「政府」の地位の低下を認めつつ、政府の役割とは何なのか、民間やNGOで政府の役割が本当に果たせるのか、といったところを再度確認しています。
ギデンズは“オーバーラップする箇所はあっても、やはり「政府の役割」というのが存在する。”としながらも、市民活動団体などが政府に先駆けて問題提起をしたことを評価し、グローバリゼイションの広がりとのかかわりの中で、政府ばかりでなく、多国籍企業などにとっても“無視できない存在になった。”としています。
本来的行政責任(手島孝「現代行政国家論」)の範囲(治山治水など、行政の仕事だと異論の出ないもので、行政のコアの部分であり、いわば、未来永劫、行政責任範囲からはずれることができないもの)はどこまでか、そしてその部分以外のどこまでをどの程度行政の役割とすべきなのか。「民営化」とはなんなのか。日本でもますます注目される論点であろうと感じました。
竺さんおつかれさまでした。
(メール返事した後、図書館で会ってびっくりしました。)
『人々の積極的な人生選択を具現化できる社会をつくる!』
というところ、大事な部分ですね。
黒岩徹「決断するイギリス〜ニューリーダーの誕生」(文春新書)では、トニー・ブレア首相自身の生い立ちや成長について紹介されています。『人々の積極的な人生選択を具現化できる社会をつくる!』これはまさに彼自身のことにうつります。
またブレアが中産階級に支持され、そしてブレアの新しい政策が新たな中産階級を生みだしていったという循環がわかると、「THE THIRD WAY」の値打ちがわかりました。
Posted by: nishimura : May 16, 2005 11:37 PM